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研究概要

脱炭素・循環型社会の実現に向けて,“水素”の果たす役割は極めて大きく,様々な利活用が期待されています.中でも“燃料電池”は,将来の水素エネルギー社会における中核的存在であり,本格的実用化のためには現状レベルを超える高効率化,低コスト化,高耐久化が求められています.本研究室では,熱工学,化学工学,電気化学をベースに,X線やレーザ等の先進計測技術を駆使することにより,実際の燃料電池内で生じている反応プロセスや輸送現象を解き明かし,発電性能を最大限引き出すための最適な電池構造を提案します.さらに,デジタルヘルス時代の到来を迎える中,体内埋込型医療デバイスやウェアラブルデバイスの次世代電源として期待されている“酵素型バイオ電池”の開発も進めています.

固体高分子形燃料電池(PEFC)の水管理

固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell,PEFC)は,自動車等の移動体用動力源や家庭用・業務用の定置型電源として,今後本格的な実用化・普及が期待されています.しかしながら,PEFCの更なる高効率化・高出力密度化に向けて解決すべき課題は未だ多く,主要なものに"水管理"の問題があります.本研究室では,X線イメージング技術を駆使して発電中の電池内部の液水挙動を直接可視化できるようにし,液水を電池外へ積極的に排出させるための最適な電極/流路構造の開発を目指します.

主な研究テーマ

  • X線イメージングによるPEFC多孔質電極内液水分布のin-situ計測 
  • 水分輸送機能を有するPEFC電極/流路構造の設計・開発
  • PEFCカソード電極内の気液二相流数値シミュレーション

燃料電池レーザガスセンシング技術の開発

固体高分子形燃料電池(PEFC)や固体酸化物形燃料電池(SOFC)の耐久性・信頼性向上に向けた課題として,PEFCの低加湿運転時に発生するドライアウト現象や,SOFCの不均一な発電分布に起因する機械的劣化,不純物ガスの混入による電極被毒などの問題があります.これらの問題の解決を図るには,電池内部の反応や物質移動を精緻に捉えることが可能な計測技術の開発が不可欠です.本研究室では,高感度なレーザ分光法(TDLAS法)を応用することにより,燃料電池内のガスの成分濃度をリアルタイムで連続モニタリングできるレーザガスセンシング技術の開発を進めています.

主な研究テーマ

  • 光ファイバプローブを用いた燃料電池レーザガスセンシング技術の開発
  • 蛍光消光現象を利用した燃料電池内の酸素濃度計測技術の開発
  • マルチパスセルを用いた燃料電池内の不純物ガスモニタリング技術の開発

酵素型バイオ電池の開発・高出力密度化

酵素型バイオ電池は,糖やアルコールを生体触媒(酵素)で分解し電気エネルギーに変換する発電デバイスであり,小型・軽量で生体親和性が高いことから,体内埋込(インプラント)型やウェアラブル型の医療機器・センサーの新たな電源として有望視されています.本研究室では,ヒトの汗で発電可能な“乳酸バイオ電池”に着目し,高エネルギー密度を実現させるための酵素固定多孔質電極の構造設計ならびに最適化を進めています.

主な研究テーマ

  • 乳酸バイオ電池の作製と電気化学的特性評価
  • 炭素ナノ材料を用いた微細多孔質電極の開発と反応界面の拡大化
  • 酵素固定多孔質電極の濡れ性制御と物質輸送の促進
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